年金の追納・付加年金は「オルカンに回す」より得か?利回りとモンテカルロで比較してみた

前回の記事(FIRE計画に年金を入れ忘れていませんか?)で、学生納付特例の期間は追納しないと基礎年金が減る、という話を書きました。私自身、学生時代の免除期間があり「追納すべきか」を考えている一人です。

そこで湧いてくるのが、投資をしている人なら誰もが抱く疑問です。

「その追納の数十万円、オルカンに入れた方がよくない?」

年金の追納や付加年金は、見方を変えれば「国から終身年金を買う」行為です。それなら投資商品として値踏みできるはず。利回り(IRR)とモンテカルロシミュレーションで、真面目に比較してみました。

比較の前提

ケース1:付加年金——結論、破格です

付加年金は、国民年金の第1号被保険者(自営業・フリーランス・早期リタイア後など)が月400円を上乗せで払うと、「200円×納付月数」が毎年、終身で年金に上乗せされる制度です。

例:35歳から60歳まで25年間(300ヶ月)払うと、負担総額12万円で、65歳から年6万円が一生もらえます。2年で元が取れます。

では同じ月400円を、35〜60歳の25年間オルカンに積み立てて、65歳から同じ年6万円(月5,000円)を取り崩したら?(名目7%で計算)

付加年金 月400円をオルカン積立
65歳時点の元手 ―(掛け捨て) 中央値33万円
年6万円の給付が100歳まで続く確率 100%(終身) 9%
資産が尽きる年齢(中央値) 尽きない 71.5歳

オルカン積立では中央値33万円にしかならず、年6万円を取り崩すと9割のシナリオで70歳過ぎに尽きます。当然で、付加年金を「投資商品」として見たときのIRR(内部収益率)は、85歳まで生きた場合で名目8.5%。オルカンの期待リターン(名目7%)を、リスクゼロで上回ってしまうんです。

付加年金を「投資商品」とみたときの名目利回り(IRR)
75歳まで受給した場合7.0%
80歳まで受給した場合8.0%
85歳まで受給した場合8.5%
90歳まで受給した場合8.8%

オルカンの期待リターン(名目7%)

長生きするほど利回りは上昇。75歳でも早くもオルカンの期待リターン(破線)に並び、以降は上回る。しかも国が支払いを保証するリスクゼロの利回り。

弱点も正直に書いておくと、付加年金は物価スライドがなく金額固定なので、インフレが続くと実質価値は目減りします(インフレ2%が30年続けば実質半分弱)。それを織り込んでも実質IRRは6%超で、やはり破格です。第1号被保険者になったら、原則入り得(国民年金基金とは併用不可な点だけ注意)。金額が小さいので人生は変えませんが、断る理由が見当たりません。

ケース2:追納——期待値のオルカン、保険の追納

次は本題の追納です。例として、学生納付特例4年分(48ヶ月)を30歳で追納するケースを考えます。

単純計算では、64万円 ÷ 8.47万円/年 ≒ 7.6年、つまり73歳まで生きれば元が取れます。終身年金としてのIRRはこうなります。

何歳まで生きるか 追納の実質IRR
75歳 0.7%
80歳 1.7%
85歳 2.2%
90歳 2.6%
95歳 2.9%
追納を「終身年金」とみたときの実質利回り(IRR)
75歳まで受給した場合0.7%
80歳まで受給した場合1.7%
85歳まで受給した場合2.2%
90歳まで受給した場合2.6%
95歳まで受給した場合2.9%

オルカンの期待実質リターン(5%)

付加年金と違い、追納の利回りはオルカンの期待リターン(破線)には届かない。「株式の代替」ではなく「安全資産の代替」として見るのが妥当。

実質2〜3%・国が支払いを保証する終身年金。悪くないですが、オルカンの期待実質リターン5%には届きません。では実質負担と同じ64万円を30歳でオルカンに一括投資し、65歳から追納で増えるはずだった年8.47万円を自力で取り崩したら?

追納 64万円をオルカン一括
65歳時点の資産 ―(年金権利) 中央値201万円(下位10%は52万円)
年8.47万円が100歳まで続く確率 100%(終身) 51%
下位10%のシナリオ 影響なし 71歳で尽きる
寿命が90歳だった場合 受け取りはそこまで 中央値で数百万円をご家族に遺せる

綺麗に五分でした。中央値のシナリオではオルカンが圧勝します(取り崩してもむしろ増え続け、遺産まで残る)。しかし半分のシナリオでは100歳まで持たず、運が悪い1割では71歳——「元が取れる年齢」とほぼ同時に尽きます。追納が買っているのは、この下振れと長生きの両方に効く保険です。

私の整理:どっちに回すか

前提と注意点

この記事のシミュレーションも、公開中の シンプルFIRE計画 と同じ計算エンジンで行っています(計算スクリプトはサイトのリポジトリで公開しています)。


筆者:yokafolio(30代・FIREを目指して積立中)。「余白のある人生」をテーマに、シンプルな家計・資産ツールを作っています。

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