FIRE計画に年金を入れ忘れていませんか?成功率41%→57%に変わるシミュレーション結果
FIREの計画を立てるとき、「年金はあてにしない」と考える人は多いと思います。私も最初はそうでした。もらえるか分からないものを計算に入れるのは不安だし、無視しておけば安全側だろう、と。
でも、取り崩しシミュレーションをいじっているうちに気づいたんです。年金を無視した計画は「安全側」というより「過剰に保守的」で、必要以上に長く働く選択をしているかもしれない、と。
前回の記事(4%ルールはFIREでも通用する?)の設定に年金を足すと数字がどう変わるか、検証してみました。
検証方法
- 40歳・資産5,000万円でリタイア、生活費は月16.7万円(開始資産の4%/年)
- 運用:期待リターン年5%・リスク(標準偏差)18%
- 年金:65歳から月7万円・10万円・13万円の3パターン。年金分だけ取り崩しが減る(65歳以降の取り崩し=16.7万円−年金額)
- 判定:100歳時点で資産が残っていれば「成功」。モンテカルロ法で1万回試行
早期リタイアすると厚生年金の加入期間が短くなり受給額は減ります。月10万円は「40歳まで会社員として働いた人の控えめな目安」、7万円はさらに保守的なケース、13万円は加入期間が長め・報酬が高めだったケースのイメージです(正確な見込み額は「ねんきん定期便」や公的年金シミュレーターで確認できます)。
結果:年金月10万円で成功率41%→57%
| 65歳からの年金 | 100歳まで資産が持つ確率 |
|---|---|
| なし(前回記事の設定) | 41% |
| 月7万円 | 52% |
| 月10万円 | 57% |
| 月13万円 | 65% |
年金を無視した計画(41%)は、実態より過剰に保守的。期待リターン年5%・リスク18%・1万回試行。
年金月10万円を織り込むだけで、成功率は41%から 57% へ16ポイント改善しました。サイドFIREで月10万円を60歳まで稼ぐケース(前回検証では63%)に迫る効果です。何もしなくても、です。
構造はサイドFIREと同じで、「取り崩し額が減る期間」ができるから。ただし年金は65歳以降=取り崩しの後半に効くのに対し、サイドFIREは前半に効くという違いがあります。取り崩し計画は序盤の相場が悪いと崩れやすい(リターン順序リスク)ので、同じ月10万円でも前半に効くサイドFIREのほうがやや強い、というのも納得の結果でした。
リタイアが遅いほど、年金の効果は大きい
もう一つ興味深いのが、リタイア年齢との組み合わせです。50歳リタイア(同じ資産5,000万円・月16.7万円)で比べると:
| リタイア年齢 | 年金なし | 65歳から月10万円 |
|---|---|---|
| 40歳 | 41% | 57%(+16pt) |
| 50歳 | 46% | 73%(+27pt) |
50歳リタイアだと、年金なしでは46%とほぼ変わらないのに、年金を織り込むと 73% まで跳ね上がります。「年金までのつなぎ期間」が25年から15年に縮むためで、リタイアが遅い人ほど年金を無視するコストは大きいことになります。
「4%より使う」計画も視野に入る
逆の見方をすると、年金を織り込めば生活費の水準を上げられます。同じ40歳・5,000万円で、65歳から年金月10万円をもらう前提なら:
| 65歳までの生活費 | 取り崩し率(年) | 成功率 |
|---|---|---|
| 月16.7万円 | 4.0% | 57% |
| 月20万円 | 4.8% | 42% |
| 月25万円 | 6.0% | 24% |
月20万円(4.8%)使っても、成功率は「年金なしの4%ルール」(41%)とほぼ同じ42%。つまり年金を無視して月16.7万円で我慢する計画と、年金を織り込んで月20万円使う計画は、リスクがほぼ同じなんです。どちらを選ぶかは価値観ですが、知らずに前者だけを見ているのはもったいない。
自分の数字で試すには
この検証に使ったシミュレーターは、無料のWebアプリとして公開しています。
「資産で暮らす」タブのフェーズ設定で「65歳まで月16.7万円、以降は月6.7万円」のように入力すると、年金込みの計算が自分の数字でできます。登録不要・データはブラウザ内にのみ保存されます。
補足:年金月額(7万・10万・13万)の目安はどう見積もったか
「そもそも月10万って妥当なの?」と思った方のために、検算に使った概算式を載せておきます。公的年金は大きく2階建てで、それぞれ次の式でざっくり見積もれます。
① 老齢基礎年金(国民年金)
満額 月70,608円(2026年度) × 保険料納付月数 ÷ 480ヶ月
480ヶ月=20歳から60歳までの40年です。会社員期間は自動的に納付扱いになり、退職後も60歳までは国民年金の納付義務が続くので、未納や免除がなければ早期リタイアでも満額(月約7.1万円)になります。注意したいのは、学生納付特例や免除の期間は追納しないと年金額に反映されないこと(追納できるのは原則10年以内)。心当たりのある方は納付月数を減らして計算してください。
② 老齢厚生年金(報酬比例部分)
平均標準報酬額(賞与込みの月収換算) × 5.481/1000 × 厚生年金加入月数
たとえば22歳から40歳まで18年間(216ヶ月)会社員で、その間の賞与込み平均月収が35万円なら:
35万円 × 0.005481 × 216ヶ月 ≒ 年41万円 ≒ 月3.4万円
①+②で 7.1万+3.4万 ≒ 月10.5万円。これが本文の「月10万円=40歳まで会社員として働いた人の控えめな目安」の根拠です。同様に、
- 月7万円:厚生年金期間がごく短い(自営業・フリーランス中心)、または未納・免除期間があるケース。基礎年金のみ満額なら約7.1万円
- 月13万円:加入期間が長め・報酬高めのケース。例:平均月収50万円×22年なら報酬比例が月6.0万円で、合計約13.1万円
あくまで概算式です(過去の報酬の再評価や経過的加算などは省略しています)。正確な見込み額は「ねんきん定期便」か、日本年金機構の「公的年金シミュレーター」で確認するのが確実です。
前提と注意点
- 本記事のシミュレーションは、リターンが毎年独立に対数正規分布に従うという単純化したモデルです。実際の相場の動きを完全に再現するものではありません。
- 金額はすべてインフレ調整後の実質ベース(現在の価値)です。公的年金は物価・賃金にある程度連動しますが、マクロ経済スライドにより実質値は目減りする可能性があります。心配なら見込み額を1〜2割引いて入力するのが保守的です。
- 年金の受給額・制度は将来変わる可能性があります。ご自身の見込み額は「ねんきん定期便」等でご確認ください。
- 本記事およびアプリは情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
筆者:yokafolio(30代・FIREを目指して積立中)。「余白のある人生」をテーマに、シンプルな家計・資産ツールを作っています。