サイドFIREの破壊力を検証——月5万円の収入は「資産970万円分」に相当した
前回の記事(4%ルールはFIREでも通用する?)で、40歳・資産5,000万円で完全リタイアして4%ルール(月16.7万円)で取り崩すと、100歳まで資産が持つ確率は41% という結果になりました。
コイントス以下。じゃあどうするか——選択肢の一つが「完全リタイアにこだわらない」、いわゆるサイドFIREです。
「月数万円でも収入があれば全然違う」とはよく言われますが、具体的に何%変わるのかを数字で見たことはあるでしょうか。シミュレーションで確かめてみました。
検証方法
- 40歳・資産5,000万円でリタイア、生活費は月16.7万円(開始資産の4%/年)
- 運用:期待リターン年5%・リスク(標準偏差)18%
- サイドFIRE:月5万円・10万円・15万円の収入を60歳まで(または65歳まで)続け、その分だけ取り崩しを減らす。以降は全額取り崩し
- 判定:100歳時点で資産が残っていれば「成功」。モンテカルロ法で1万回試行
結果:月5万円で+12ポイント、月10万円で+22ポイント
| 働き方 | 100歳まで資産が持つ確率 |
|---|---|
| 完全リタイア(収入ゼロ) | 41% |
| 月5万円の収入を60歳まで | 53% |
| 月10万円の収入を60歳まで | 63% |
| 月10万円の収入を65歳まで | 67% |
| 月15万円の収入を60歳まで | 73% |
月5万円——週1日のアルバイトや小さな副業レベルの収入で、成功率は41%から53% に跳ね上がります。「12ポイント」だとピンと来にくいので、100通りのシミュレーション結果をそのまま升目にしてみました。
完全リタイア(収入ゼロ)41/100
月5万円の収入あり(60歳まで)53/100
資産が持つ(完全リタイアでも成功する41通り)月5万円の収入が追加で救う12通り資産が尽きる
同じ100通りのシナリオのうち、月5万円の収入があるだけで12人分、老後の資産が持つ側に回る計算です。開始資産5,000万円・期待リターン年5%・リスク18%・1万回試行。
100通りのうち完全リタイアで成功するのは41通りだけですが、月5万円の収入があるだけで、さらに12通りが「成功」側に加わります。月15万円(パートタイム勤務くらい)なら73% まで伸びます。完全リタイアの4%ルールとは別世界です。
わずか月5万円の収入で成功率は+12ポイント。期待リターン年5%・リスク18%・1万回試行。
理由はシンプルで、取り崩し初期の「資産を減らさない期間」が長くなるから。取り崩しシミュレーションでは、最初の10〜20年に相場が悪いと資産が一気に目減りしやすい(いわゆるリターン順序リスク)ので、その期間の取り崩し額を抑えられるサイドFIREは、数字以上に効きます。
月5万円の収入は「資産いくら分」なのか
ここで一つ、面白い計算をしてみました。「月5万円×60歳までの収入」と同じ成功率(53%)を、完全リタイアで達成するには資産がいくら必要かを逆算します。
答えは約5,970万円。つまり、
月5万円の収入(60歳まで)= 資産約970万円分
月5万円を20年間稼ぐ総額は1,200万円ですが、「今の時点の資産」に換算しても約970万円分の価値がある、ということです。資産970万円を追加で貯めるには、月10万円積立でも6〜7年かかります。「あと1,000万円貯めてから完全リタイア」と「今の資産でサイドFIRE」がほぼ等価——そう考えると、選択肢の見え方が変わってきませんか。
意外な結果:小さい収入は「延長」してもあまり効かない
もう一つ、表をよく見ると面白い点があります。月10万円の収入を60歳→65歳に延長すると63%→67%と伸びるのに、月5万円は60歳まででも65歳まででも53%でほぼ変わりませんでした。
うまくいかないシナリオでは、60歳時点ですでに資産がかなり目減りしていることが多く、月5万円程度の補填では挽回が難しいのです。「小さい収入を長く」より「そこそこの収入を早い時期に」 のほうが、資産を長持ちさせるには効くという結果でした。
自分の条件で試すには
この検証に使ったシミュレーターは、無料のWebアプリとして公開しています。
「資産で暮らす」タブのフェーズ設定で、たとえば「60歳まで月11.7万円(生活費16.7万−収入5万)、以降は月16.7万円」のように入力すると、今回と同じ計算が自分の数字でできます。登録不要・データはブラウザ内にのみ保存されます。
前提と注意点
- 本記事のシミュレーションは、リターンが毎年独立に対数正規分布に従うという単純化したモデルです。実際の相場の動きを完全に再現するものではありません。
- 金額はすべてインフレ調整後の実質ベース(現在の価値)で考えています。期待リターン5%は実質リターンを控えめに見た参考値です。
- 収入は税・社会保険料を引いた手取りで考えてください。また、労働収入が長期間安定して得られるかどうか自体にも不確実性があります。
- 本記事およびアプリは情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
筆者:yokafolio(30代・FIREを目指して積立中)。「余白のある人生」をテーマに、シンプルな家計・資産ツールを作っています。